2007年2月23日(金)
今から数年前、新潟県某情報誌の仕事をさせていただたとき、あるお寿司屋さんに取材に伺ったことがありました。
取材のときには予め決められていることをいくつかお伺いするわけですが、自分はそのお寿司屋さんのご主人に「何かサービスはありますか?」という質問をしたのです。
そうしましたらお寿司屋さんのご主人の顔が急に曇ったではありませんか。自分は仕事だから伺うわけですが、何か悪いことを質問してしまったのだろうかと思いました。ヤバいかもしれないと思いつつ、顔色を見ながらお話を伺ってみます。
そのお寿司屋さんは、開店十周年のときにまぐろ半額と鉄火丼半額のサービスを実施されたそうです。それはいつもお店をご利用いただいている馴染みのお客様に対する感謝の気持ちを込めたものでした。しかし、実際にそのサービスを利用された方はお馴染みの方ではありません。今まで一度もお越しいただいたことのないのお客様ばかり。
むしろ馴染みのお客様たちは「お店が忙しいだろうから」「忙しいところに行ったら悪い」と遠慮をしてそのサービスを利用しませんでした。一番利用していただきたい方に利用されなかったのです。半額サービスのみを利用するお客様は通常のお値段ではお店に足を運びません。サービス目当てでこのときだけのお客様。
それでは何にもならない、サービスをやっても何も価値が無いということで、そのようなサービスを止めたのだそうです。
自分はそのお寿司屋さんのお話を伺うまでは、サービスとは単なる客寄せのためのものと思い込んでおりました。サービスを提供する側に感謝の気持ちが込められているなどと自分は思いもしなかったのです。だから、このお寿司屋さんのお話は自分にとっては驚きでありました。そして、そのことに気付かなかった自分はほんとに馬鹿だと思います。
それから、お寿司屋さんとお馴染みさんの関係もいいと思いませんか? お馴染みさんに感謝の気持ちを持つお店の方が立派だと自分は思いました。
また、自分がお客だからと態度が大きくなるわけでもなく、半額という言葉に惑わされないお馴染みさん。加えてお店の方に対する気遣いも忘れていない。お店の提供するものの価値を認めてその対価を惜し気もなく支払う。
そのお店とお客さんとの信頼関係というか付き合い方がいいなと自分は思います。どれくらいのご苦労があったのか自分には想像もつきませんが、お寿司屋さんの努力の賜物なのでしょう。
それらはあたりまえのことと思われるかもしれません。だけど、そのあたりまえと思われることができていないことだって現実にあります。あたりまえなこと、あたりまえのような人間関係を築くことに四苦八苦している自分にとって、このお寿司屋さんのお話は何かと発見がありました。
商売とは、難しく奥の深いものだと思わずにはいられません。そして、「あたりまえ」と思われること、「あたりまえ」と認められる仕事ができるようになりたいと自分は思うのであります。
--------- 広告はじめ ---------
--------- 広告終わり ---------